騙される人の話
ある話を聞いた時の反応として、
(1)鵜呑みにする人
(2)鵜呑みにはしないが、根拠を示されると納得する人
(3)鵜呑みにしない上に、根拠を示されてもそれが信頼に値するものかどうか疑う人
というパターンがあると思います。
例:「最近日本は好景気である」とニュースでアナウンサーが発言している。
「ふーん、景気いいんだー」と思う人→(1)
「え、そうかなあ?」と思ったところでアナウンサーがグラフを示し、専門家へのインタビュー映像が流れる。それを見て「なるほど、景気良くなってるんだ」と思う人→(2)
「景気はよくないでしょ」と思い、グラフには「どのように取ったデータなのかわからない」、インタビュー映像には「御用学者なのではないか」と疑いを持ち、自分が納得できる証拠が出てくるまで「最近日本は好景気である」ということを信じない人→(3)
今日は、この(1)と(2)の中間くらいにいる人の話をします。
最近、ある自然食品のお店で新しい調理器具を使用しての実演料理教室のチラシをもらったのですが、そこにはこう書かれていました。(調理器具の商品名は私が適当につけていますが、太字・フォント・下線などはできるだけ本物に忠実に再現しました。)
電子レンジをやめて、
安全で美味しい料理を求める全ての方にこそ!◯◯オーブン“おぶん丸”
何はともあれ安全、ハイパワーで省エネです!△△ヒーター“ひた五郎”
電子レンジの加熱に伴うマイクロ波の危険性は様々なメディアによって取り上げられていますが、最大の問題は、電子レンジのマイクロ波が食べ物のエネルギーを熱に変えて調理しているということです。
本来、料理というものは、エネルギーは外から食べ物に加わるのが当たり前です。
エネルギーが外から加えられずに食べ物が内に持つエネルギーを利用するというのは、食べ物のエネルギーがゼロになってしまうということなのです。
すなわち、エネルギーが枯渇した燃えカスのような食べ物を摂取することになり、我々の体にはエネルギーが補給されず、食べれば食べるほど栄養失調状態に陥るのです。
実は、現在太っているのに栄養失調状態の人が増加しているのです。
電子レンジを利用する暮らしを見直しませんか?
これからの時代においては、健康を守るため手作りの料理を!
昔ながらの“蒸す、ふかす”で料理を手軽に楽しめる◯◯オーブン、食卓で天ぷらなどみんなで楽しみながら調理できる△△ヒーター。(以下略)」
一読して違和感を覚えた私は帰宅した夫に「これ読んでみて」と手渡すと同時に写真を撮って弟にもLINEしました。私は文系なので、科学っぽい話が出ると現役理系大学生である弟にいちいちLINEするのです。(全然情けなくない。)
以下、弟とのLINEがのやりとりです。
私「なんかすごい文書もらったw(チラシの写真を添付)これ理系の学生から見てどう?」
当然弟から「なんだよこれwww」といった内容の返信があるものと思っていた私は、実際に返ってきた弟からのLINEを読んで驚愕します。
弟「電子レンジによる加熱で食品のエネルギーが失われるというのは有名な話」
「それを食べても必要な栄養素を摂取できないというのは理にかなっている」
なんということでしょう。あの理系の弟がこんな風に言うなんて。
私「マジか」
ああ大変だ大変だ!慌てて夫に言いました。
私「ねえ、弟がこういう風に言ってるんだけど!どうしよう!怖くない?」
夫「ハハッ、弟また嘘ついてんだろ」
私「えー?」
すぐに弟にLINEしました。
私「また嘘ついてんだろww by義兄」
「姉をまた騙そうとしていると疑われてるよw」
この時点で私は完全に弟のことを信用していて、夫がこんな風に言っているということを伝えることで弟が気を悪くしないかと心配すらしていたのですが、
弟「m9(^Д^)」
「嘘に決まってるしょ」
私「・・・・」
「ひでえ」
2歳違いの弟が私と対等に話をできるようになって以降幾度となく騙されている姉ですが、またしても騙されました。夫の言うとおりでした。けれど、騙して終わらずにちゃんと説明してくれる優しい弟です。(姉バカではない。)
弟「電子レンジはマイクロ波が食品中の水分子にエネルギーを与えることで振動させて熱を生み出しているのに、食品が内に持っているエネルギーを熱に変えるなどという説明は矛盾している」
「そもそも食品の内部エネルギーを熱に変える技術があったら、ノーベル賞どころか世界中の資源問題が全て片付くよ」
私「ぐぬぬ」
ここまでですでに残りのHPが3くらいになっていた私ですが、次の弟の言葉でとどめをさされてしまいました。
弟「自然食品を売りたくて店開くぐらいだから、自然派という概念を盲信してしまうんだろうね。たぶん店の人がメーカーに騙されてるよ」
私「泣ける」
今日は自分のために泣きました。
いろいろと思うところはあるのですが、まず言いたいのは「脅しのような宣伝方法は好きじゃないな」ということです。
「◯◯しないとこんなひどいことが起こります!」というような宣伝文句を使われると咄嗟に拒絶反応が出てしまうのです。子どもを叱るときも「はやく着替えないと遅刻するよ!」と言うよりも「遅刻しないようにはやく着替えよう!」と言った方が急ぎますが、それはやはり言葉の印象だと思うのですね。
次に言いたいのは、根拠を示されてもそれが信頼に値するものかどうかきちんと検討することが大切だということです。
今回の話では、弟からのLINEがチラシに書かれていることを信じる根拠となってしまったわけですが、ここでもう一度弟の書いた内容を見てみます。
弟「電子レンジによる加熱で食品のエネルギーが失われるというのは有名な話」
「それを食べても必要な栄養素を摂取できないというのは理にかなっている」
いかがでしょうか。
何も言っていないに等しいですね。チラシで言われていることを繰り返しているだけです。
それなのになぜ信じてしまったのか。それは「有名な話」「理にかなっている」という文言が原因です。(私がすぐ他人を信用するアホだからというのは一旦置いておきます。)それらしい言葉で権威づけされてしまったのです。
これはテレビのニュースでも起こりうることで、権威のある機関による発表だからといってそこで思考放棄して内容を精査しないというのは危険なことなのですね。
長々書きましたが、まとめると、ときには疑ってみることも必要だということです。
ところで、冒頭で書いた(1)と(2)の中間くらいにいる人というのはもちろん、
俺だ俺だ俺だ!!!
(タカアンドトシを応援しています。)