にくまるを襲った悲劇 その弐(完結)
前回からの続きです。
救急車の到着を待つこと15分。救急隊の方が到着しました。
にくまるの様子を調べていただいている間に誤飲の経緯を聴かれます。中毒110番に電話で聞かれたことはメモにまとめておいたのでそれを渡し、補足的にいくつか説明をした後で救急車に乗り込みました。
そこまでは動揺してはいけないと思って気を張っていたのですが、腕の中で真っ赤な顔をして車内をぼうっと眺めているにくまるを見ると、自分のせいでこんなことに…という強い自責の念に襲われました。にくまるが生まれる前にゆきまる(娘・4歳)が大きなお腹を触ってくれたこと、にくまるが生まれた日のこと、新生児の頃はあまり寝てくれなかったこと、生後3か月くらいからやけに愛想のいい子だったこと、ひとりで立つのも歩き出すのも随分早かったこと、引っ越しという環境の変化があってもいつも機嫌がよくて親としては助かったこと…いろいろなことが思い出され、涙が溢れて止まりません。すると、それを見た救急隊長さんが黙ってティッシュを差し出してくれました。
「お母さんもお疲れですもんね。すぐに気付けたのが素晴らしいです。
それから、急いで救急車を呼んでくださってありがとうございます。」
穏やかな声でそう言われました。一言も責められないことにホッとして、さらに涙が出てきてしまいました。
その間隊員の方がどこかへ電話をかけていたようでしたが、一旦電話を切って隊長さんに何事か耳打ちしました。うなずきながらそれを聞いた隊長さんは、申し訳なさそうに告げました。
隊長さん「お母さん、すみません。近くの病院に受け入れを断られてしまいました。そこへ行けないとなると…今日の当番は◯区の▲病院です。」
ぶた子「◯区の▲病院って…」
私の住む家からは札幌の端から端といっていいくらいの距離のところです。
隊長さん「ここから40分はかかります。」
ぶた子「…行ってください。お願いします。」
季節は真冬の2月。雪の中を救急車が走り出すと、隊長さんは、
「さあ、がんばろうね。」
とにくまるを撫でながら優しく声をかけてくれました。
救急車には窓はありますが外がほとんど見えません。現在地もあとどれくらいで病院に着くかもわからず不安な顔をした私を、隊長さんは付かず離れずといった絶妙な距離感で、たまに雑談をしながらずっと励まし続けてくれました。
途中、路面が悪くてタイヤに巻いたチェーンが切れてしまうというアクシデントもありましたが、救急車は無事に病院に着きました。診察室に入ると隊長さんはお医者さんと何か話をし始め、私も別のお医者さんににくまるを診てもらいながら事情を説明することになりました。
お医者さん「どうしてお酒を飲んだんだっけ?」
ぶた子「かくかくしかじか…こういうわけです…。本当にすみません。」
お医者さん「んー、普通これくらいの子だとアルコールを分解できなくてもっとぐったりしちゃうことが多いんだけどね。
この子、もう酔いが覚めてると思うよ。」
ぶた子「え?」
たしかににくまるは、ベッドの上に置かれるやすぐに
このような体勢になり、普段目にすることがない人たちと景色に興奮気味に瞳を輝かせています。
お医者さん「にくまるくん!君、お酒強いんだね!!」
ぶた子「…すみません…。」
お医者さん「これだけ元気なら特にすることはないから、あとすこし様子見て何もなければおうちに帰っても大丈夫ですよ。
よかったね、にくまるくん。お酒入りミルク美味しかったかい?!」(ニコニコ)
ぶた子「…お手を煩わせてしまい本当に申し訳ありません…。」
お医者さん「いえいえ、これからは気をつけてね。タクシー呼ぶなら受付で頼んでね。」
すでに普段と変わらない様子でニコニコ愛想を振りまいているにくまるを抱き上げたとき、初めて「まだ救急隊長さんにきちんとお礼してない!」と気づきました。入り口を振り返って探しましたが、既に隊長さんの姿はありませんでした。
こうしてにくまるを襲った悲劇は、「にくまる、お酒に強いことが判明。」という形で幕を下ろしました。
大事には至らなかったけれど一歩間違えば大惨事だった今回の事件で学んだこと。
・ルーティーンワークほど油断しやすく、そのような油断が重大事故につながりうるということ。
・救急車を安易に呼んではいけないと言われてはいるけれど、小さい子どもについては躊躇せず呼んだほうが良いケースもあるということ。
・救急隊員の方は、人々がすやすや眠る夜中にもどこかで市民のために力を尽くしてくださっているということ。
帰りのタクシー代は8000円でした。…授業料としては安いものです。
救急隊長さんが、私の高校時代に毎日いっしょに過ごした部活仲間の後輩だったというのは、後日判明したお話。田舎って狭いです。
オリジナル・ラブのライブ@札幌まで
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